秋山邦久『臨床家族心理学』

家族支援のあり方や具体的援助戦略に悩む「援助者」に役立つ本を献本いただいたので、以下に紹介する。

臨床家族心理学―現代社会とコミュニケーション

【400字程度の紹介文】
「コミュニケーション不足が問題なのではない、コミュニケーション不全が問題なのだ」。秋山邦久『臨床家族心理学』(福村出版)では、親子関係・家族関係という関係性(システム)に働きかけ、コミュニケーションの質を上げる家族支援のあり方が述べられている。

内容は、現代家族が抱える問題と特徴(1〜5章)、家族支援(6〜9章)、発達障害と家族療法(10〜11章)の3つに大きく分けられる。5〜9章には13の事例が挙げられ、家族の多様性と家族支援の具体例が提示されている。

「現代家族が抱える問題と特徴」では、現代家族の諸問題・課題とその対応方法がまとめられている。「家族支援」では、援助関係や相談者・援助者双方を取り巻く環境と、コミュニケーションに対する理解を深めている。「発達障害と家族療法」では、アスペルガー症候群への援助の実際や、家族問題の解決に役立つ家族療法の概要について説明している。

本書は、家族支援のあり方や具体的援助戦略に悩む「援助者」にこそ役立つ一冊である。(435文字)



【1500字程度の紹介文】
「コミュニケーション不足が問題なのではない、コミュニケーション不全が問題なのだ」。秋山邦久『臨床家族心理学』(福村出版)では、親子関係・家族関係という関係性(システム)に働きかけ、コミュニケーションの質を上げる家族支援のあり方が述べられている。

内容は、現代家族が抱える問題と特徴(1〜5章)、家族支援(6〜9章)、発達障害と家族療法(10〜11章)の3つに大きく分けられる。5〜9章には13の事例が挙げられ、家族の多様性と家族支援の具体例が提示されている。

「現代家族が抱える問題と特徴」では、現代家族の諸問題・課題とその対応方法がまとめられている。「家族支援」では、援助関係や相談者・援助者双方を取り巻く環境と、コミュニケーションに対する理解を深めている。「発達障害と家族療法」では、アスペルガー症候群への援助の実際や、家族問題の解決に役立つ家族療法の概要について説明している。

1章「現代家族の諸問題」では、児童虐待不登校ニート・引きこもりなど、家族関係や子育てに関する様々な問題について、統計資料からその現状を明らかにしている。

2章「現代家族の特徴と特殊性」では、現代家族が核家族を中心としながらも様々な形態や関係性を内包しており、その機能は常に変化していることを示している。

3章「家族の誕生から消滅まで」では、家族の誕生から消滅までを誕生前史、誕生と発達、消滅の3つに分け、関係性や発達段階によって整理している。

4章「家族関係の理解」では、家族というシステムが内包している人間関係について、夫婦関係、親子関係、母子関係、きょうだい関係の4つについて検討している。また、子どもの心の健全な育成のために必要な、家庭内の母性と父性の兼ね合いについても説明している。

5章「現代家族の課題とその対応」では、価値観の多様化への対応やコミュニケーションの工夫、そして時代の変化と文脈(雰囲気や話し方)についてまとめている(4事例)。

6章「家族支援と文脈」では、相談者自身に費用がかかる場合と費用がかからない場合といった、援助者や援助機関と相談者との間の文脈(状況)のズレによって生じる変化について検討している(5事例)。

7章「環境の変化と子どもへの対応」では、環境の変化とストレス、子どもへの影響、そして大人の対応についてまとめている(1事例)。また、子どもの成長に伴って生じる身体や精神状態の変化といった、内部環境の変化についても言及している。

8章「子どもからのサインを受け取る」では、ストレスを受けた子どものサインを周囲の大人が気づき、適切な対応をしていくために必要な知識について整理している(2事例)。具体的には、「ことば」にならないサイン、身体症状、行動、被虐待児の示すサインを挙げている。

9章「家族支援における専門機関との連携」では、子どもの問題を通して家族問題に取り組む機関である児童相談所について概説し、専門機関や専門職の連携のあり方について提言している(1事例)。

10章「発達障害と家族」では、発達障害の中でもアスペルガー症候群を取り上げ、コミュニケーションの取り方や援助の実際といった家族援助の視点から検討している。

11章「家族問題の解決に向けて」では、家族療法の基本的な考え方を示した上で「ソリューション・フォーカスド・アプローチ」について概説している。具体的には、面接の主体性、家族成員の構造と関係性の把握、解決に向けての関わり、ソリューション・トークである。

本書は、家族支援のあり方や具体的援助戦略に悩む「援助者」にこそ役立つ一冊である。(1505文字)

・著者紹介

著者の秋山邦久氏は、児童相談所の心理判定員として16年間働き、文教大学の専任講師として7年間務め、2010年より常磐大学の准教授となっている。他方で、越谷心理支援センターTwitterこちら)を開業しており、2013年で10年目を迎えている。「心の問題を短期で効果的に解決すること」を目的とした、質の高いサービスを提供している生粋の臨床家である。

・出版社紹介文

児童虐待、家族崩壊に見える親子間のコミュニケーション不全。家族のシステム全体に働きかけていく心理臨床的援助と問題への処方箋を、臨床家族心理学の立場から考える。


・他紹介文
山梨臨床心理と武術の研究所