世界を歩いて考えよう!

・自分の生きる世界の「前提」を学べる
・日本の「未来」が想像できる
・紹介された世界を「旅」したくなる

社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!

社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!

上記の著書には3つの効用があると思う。

ちきりん女史の著書は本作で3作目。
縁あってブログを読んで以来、大のファンだ。

1 前提

「お金は信用から成り立っている」
「信頼関係を築くことが何より大事」

どれも大前提として説明されている。
ただ、自分の腑に落ちる説明というのがほしかった。
もちろん前職での体験や今までの自分の過去から語ることもできるが、著書によってもよく理解できた。

著者のエピソードの一つに「異国でデノミネーションに遭遇」がある。
1993年メキシコにおいてデノミネーション(以下デノミ)が行われた。デノミとは、インフレが続いて通貨価値が大きく下がってしまった国が新たな通貨単位を設定し、同時にインフレ抑制策を取ることで通貨への信任を取り戻そうとする政策である。
メキシコの地方ではデノミ以降にも、以前に通貨の価値が乱高下していたことへの不信から、店によっては米ドルで値段を表記するところや、金で表記するところもあったとのことである。
これらのことから、著者は、「通貨の信任を得る」とは、国際的な信任だけでなく、「その国の住人が、その通貨を信じているか」ということ、と理解している。

また、「現金を触らせてもらえない店員」というエピソードもある。
南米のある国では、商品を買うにも3つの行程を経る必要があった。お店である商品を買おうとしても店員からはメモを渡されるだけで、奥のレジに行けと言われる。メモを持って奥に進むと、そこには銀行の窓口のような受付がありお金を払う。そこで受け取ったレシートを持って商品のある場所に戻り、店員に見せるとやっと商品を受け取ることができる、という仕組みだ。
なぜこんな面倒くさいことをするかというと、経営者は店員を信頼していないし、客のみならず店員までも商品やお金を盗むという前提で店のシステムが運営されているからだ。
ここから信頼関係を築かなければ、非常に効率の悪い仕組みに頼らざるを得ないということが言える。

「円」の価値を疑いもせず、アルバイトでも売上金に触るのが当たり前。
このような自分の生きている世界の前提を理解できると、そのありがたみも実感できる。
同時にその前提を信じるリスクも理解でき、対策が打てる。


2 未来

世界はすでにつながってしまった。

東京はよくも悪くも国際化が進んでいると思う。観光面でも、労働面でも。
秋葉原、浅草、上野、新宿、渋谷など中国・韓国・欧米・欧州・南米など様々な言語が飛び交っている。
秋葉原の「萌え」「AKB48」は有名だし、浅草も昔から欧米の観光客が多い。
上野の海鮮丼屋には韓国人や中国人がたくさんいたし、新宿の電器屋には中国人家族の間で中国語が飛び交う。
居酒屋や飲食店の店員もアジア系の名前の人がかなり増えている。
品川など国債空港とつながる駅には、英語、北京語、広東語、ハングル語の4表記が当たり前になっている。
地方で働いているときには、一部(工業地域や観光地など)を除きあまり感じなかった。

日々のニュースを必死に追いかける必要がなくなっている。
占い師や予言者でもないが、「他国の歴史が日本の未来を現してくれている」と感じられるからである。
未来が予測できると不安は少なくなる。なぜならば対策が打てるからだ。
対策を打てるとおもしろくなる。安心して学べる。
理解できなかった人の発言が理解できるようになり、感性が豊かになっている気がする。
「逆バリ」と「先読み」

違いがおもしろい、違いの軸(基準)がほしいのかもしれない。
そうすれば自分の故郷のよさを世界に発信できる。
きっとまだ気づかれていないよさに気づくことができる。

自分がやりたいことや夢が広がる。今までの経験とつながる。
そんな体験ができる本だ。


3 旅

生きること=旅をすること。
著者は冷戦下にソ連へ旅行したり、メーデーキューバに出かけたりと、積極的に世界を見ている。

旅に少しでも興味がある方は、ぜひ「旅をよりたのしむために」の項目だけでも読むことをおすすめする。
特に「旅のスタイル」の中で、著者が好きなスタイルとして現地の専任ガイドを雇うことを挙げている。
私もイギリスへ2回行っているが、強く印象に残っているのは現地のガイドの説明と人柄だ。

自由活発でキュートな50代の女性ガイドさん。日本人ながらロンドン滞在は25年。サービス精神が旺盛で、移動のバスの中でも、「遺跡の由来はどうだ、歴史的にはどうだ、日本と比較するとどうだ」と惜しげもなく話す。
広大な牧場をみて「この土地の主人は景色を買ったのよ。本当のお金持ちは若いうちから起業するのよ」と私たち若者を励ます。
バスのルートについても「私だったらこうまわって、ここの滞在時間はもっと短くして、ここは増やすわね」と話す。
一緒に食べた昼食では「もし機会があればまた私を(ガイドとして)指名してね」という営業も忘れない。
観光地に着いた後も豊富な知識で「これだけは観て感じてほしい。本物を見てね。写真撮影の角度はこれが最高よ」と熱く語っていたかと思いきや、自分にも疑問点が生まれるとその場で現地のスタッフに質問する。
いざお別れのときには、まだお客が車内にいるにもかかわらず「私はここで降りるので、みなさんごきげんよう」と颯爽と帰って行った。

自由で好奇心の塊のこのおばちゃんが私は好きだ。

こんなおばちゃんが英語の先生だったら、生徒は幸せだろうな。でもきっとこの人は日本に帰りたくないだろうな(苦笑)
著者も言うように、ガイドさんにしっかり質問をするためだけに英会話を学んでもいいかもしれない。
豊かに生きたい。

resourceful

★★★
※追記※

ちきりん書評ブログ受賞しました!
ありがとうございます!