スーパーバイザーとは納得業である

スーパーバイザーとは、納得業である。

これは、「スーパーバイザー(以下SV)とは説得業である」という言葉を受けての私の解釈である。
説得業とは、異動先の部長に渡された本に書いてあった言葉だ(石川久, 木下安司『スーパーバイザーの条件』)

スーパーバイザーの条件

スーパーバイザーの条件

説得業という言葉からは、説き伏せるといった印象を受ける。
説教という言葉があるように、どこか一方的なニュアンスを受ける。
相手が納得していようがいまいが、納得させるという感じだ。

対して納得業というと、お互いに合意している印象を受ける。
まずは自分が納得する。そしてそれを相手に伝えて納得してもらうという感じだ。
双方向の交流が感じられる。共通の目的へベクトルを合わせるイメージがある。

もっと言うと、自分が納得するためにもその仕事の意味を理解する必要がある。
なぜその予算を達成しなければならないのか、なぜその商品なのか、なぜこの場所にこれだけの商品をこのように展開しなければならないのか。
その商品の魅力は何なのか。その商品の生まれた経緯は何なのか。その商品を売ることでどんなメリットがあるのか。デメリットはないのか。
リスクはないのか。売れ残ったときの対応策は何なのか。どのようにして売り切るのか。どこまで値下げしていいのか。どのように販促するのか。

これらのことは「理論武装」と言われる。事前シミュレーションを徹底し、相手の不安を取り除く行為である。
しかし、私たちSVと店長は戦うわけではない。店長の手取りを上げることがSVの仕事だからだ。店長の手取りが増えれば本部も儲かるのだから。
本部の理屈と店長(現場)の理屈のどこで折り合いをつけるかがポイント。
お互いに納得して仕事を行わなければ、長期的に結果は出せない。

店長だけに納得してもらえばいいわけでもない。店長だけでは店がまわらないからだ。
コンビニは原則24時間営業であり、店長の奥さんや多くのアルバイト/パートスタッフがいなければどうしようもない。
もちろん店長の店に対する影響は大きい。しかし、店長にもいろいろな事情がある。

体調が悪く通院している、高齢で長い時間働けない、はたまた借金があって生活が苦しいなどだ。
これらのことについてSVができることなどたかがしれている。
せいぜい店長の代わりにスタッフにねぎらいの言葉をかけることや、本部の財務部に節税に関する情報を聞く程度だ。
無力さを感じることもあった。
それでも自分にできることは、店をより良い状態でまわし、なおかつ店長の手取りを増やすことだと言い聞かせた。

「本部と加盟店は独立の事業者である」と契約書にうたっているように、店長たちは自営業者である。
サラリーマンとは違う生活をしている。
契約の方式はいろいろあれど、家族総出で盆暮れ正月働いている店長も多い。そんな店長たちを尊敬する。


経験を積むと担当店舗数が増える。今までは週に2回まわっていた店にも週に1回しか行けなくなる。
店長の力になるためには何ができるだろう。店のために何ができるだろう。スタッフのために何ができるだろう。
そう考えた結果が、「巡回日報に自分の想いを込める」という方法だった。

「いつもありがとうございます。自分にできることは何でもします。今後とも宜しくお願いします」
といった想いを日報に込めた。
具体的には、「目立つ場所に、必ず一つはできているところ、改善されたところを書く」という方法だ。

始めは書くのに1時間以上かかっていた。そのため上司からも不評だった。
しかし、試行錯誤の結果30分程度で終わるようになった。改善し続けた。
事前に書ける内容は書いておくなどし、店では店でしかできないことを行った。店長との話。スタッフとの話。
その結果、売上も予約商品の実績も上がっていった。


私は言葉に敏感すぎるかもしれない。それでも言葉にはこだわった。
自分がいない間に店を切り盛りしてくれているのは店長であり、そこで働くスタッフだからだ。
SVは言葉で店長やスタッフと関わっている。
ときに店長がスタッフに伝えきれないことを、日報によって補っている、と考えた。


店長との話で納得し合ったことを日報にまとめる。
納得できなかったとしても、想いを込めて置いておく。
「日報とは店へのラブレターだ」という気持ちで。

もちろん日報のおかげでのみ売上や実績が上がったわけではないとは思う。
それでも他県に異動後、たまたま前の担当店舗にかけた際、
「金井さんの日報は人気がありましたよ。今まではできてないとこばかり指摘する人ばっかだったから。言いたいことだけ言って終わり、みたいな。でも金井さんはいろいろ書くけど必ず1つは褒めてくれる。改善したところに気づいてくれる。それが嬉しいんですよ」
と言ってくれたスタッフがいた。
これは本当に嬉しかった。
少なくとも自分の想いが伝わっていた人がいる、ということが何より嬉しかった。

また長くなった。こういったことをより具体的な数字に落とし込み「職務経歴書」へ書いた。
次回は実務面についてまとめたい。

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